高校教育

芸術科 書道 コース

書道コースの学び
井伊谷宮書道パフォーマンス

■ 井伊谷宮150年例大祭奉納書道パフォーマンス

2022年9月、南北朝時代の宗良親王を祀る井伊谷宮150年例大祭で奉納書道パフォーマンスを実施しました。当日は悪天候に見舞われましたが、書道家の永山玳潤さんとコラボレーションし、心を込めて書き上げました。

多くの方の心に残る体験が
できることが、
書道コースの魅力です。
村松 由悠
(袋井市立袋井中出身)
――「井伊谷宮150年例大祭奉納書道パフォーマンス」で
取り組んだことを教えてください。
4人で宗良親王の和歌を一首ずつ書き、書道家の永山玳潤さんと一緒に大字「邁進」を一文字ずつ書きました。和歌を書く際は、紙に対する文字の大きさがつかみにくかったため、練習では隣の文字の大きさを見たり、書いた文字を見てアドバイスをし合ったりして、文字の大きさをつかんでいきました。また、和歌は暗記しなければいけないので、書きながら心の中で読んで覚えました。
大字は大きな紙に太い筆で書くので、体全体を大きく動かして筆をしっかり開くようにしました。永山さんとは書くスピードの違いがあったので、隣を見ながら呼吸を合わせるように書きました。
――この取り組みを通して感じた面白さ、やりがいを教えてください。
歴史ある神社の特別な行事に関わらせていただく中で、神社の歴史を詳しく知ることができました。また、当日は大雨だったにもかかわらず地域の方がたくさん見に来てくださり、地域との関わりを実感できました。私たちの取り組みをいろんな方に知ってもらえる良い機会だったと思います。このようなイベントを通して多くの方の心に残る体験ができることは、書道コースの魅力です。
――普段、学校ではどんな学びに力を入れていますか?
1年生の頃は行書をメインに取り組みましたが、2年生になって隷書の臨書(※名筆を学び表現すること)に力を入れるようになりました。隷書は行書とは違い、筆の運び方や起筆の入り方、収筆の形や筆使いも異なるため、一から基礎を学び直しました。古典と呼ばれる名筆により隷書特有の波磔(波打つような線)に違いがあるため、その古典の特徴と本質を理解するようにしています。古典の特徴と本質を理解し、習得することは難しいですが、それも面白さの一つだと思います。
――改めて、書道コースにはどのような魅力があると感じていますか?
書道コースと聞くと堅いイメージを持つかもしれませんが、Tシャツのデザインをしたり、紙を自由に染めたり、いろいろな墨を使って書いたりと、楽しい授業がたくさんあります。先生方も優しく丁寧に、時には楽しく教えてくださいます。同じ目標を持った友人とアドバイスをし合い、お互いに刺激を与え合いながら、充実した時間を過ごしています。
――今までの学びの成果を活かして実現したい目標を教えてください。
3年生になると卒業制作展に位置付けられている「作品展」があります。先生方や友人と関わる中で得たものを活かし、自分の中の最高の作品を作りたいと思っています。みんなで協力して良い作品展にしたいと思います。

2022年度 受賞作品

〈228×53cm〉
令和4年度静岡県高等学校
総合文化祭書道部門
第68回静岡県高等学校書道展
静岡県教育委員会教育長賞
「臨 度量如海涵春育」

〈136×34cm〉
大東文化大学主催 第63回全国書道展
文部科学大臣賞
「臨 度量如海涵春育」

努力の成果が認められ、
とてもうれしく思っています。

私が普段臨書している金農の作品には、逆台形をした字形と少し揺れる線質という特徴があります。作品制作において特に意識したのが、その部分です。字形だけでなく繊細かつ力強い線質も同時に表現できるよう意識しました。一つの特徴に意識を向けすぎるのではなく、すべての特徴を表現できるよう、時間をかけて丁寧に作品を制作しました。
朝の時間や家に帰ってからの自主練習など、授業や部活動以外の時間をできる限り使って何度も何度も練習を重ねてきました。その努力が受賞によって認められた感じがして、とてもうれしく思います。壁にぶつかることもあり、今まで何度も悔しい思いを経験しましたが、これからも書を頑張ろうと思えました。
※臨書 昔の人が書いた書の名品を学びながら書くこと
※金農(きんのう 中国清代の書家)

大野未鈴
(湖西市立新居中出身)

〈228×53cm〉
令和4年度静岡県高等学校
総合文化祭書道部門
第68回静岡県高等学校書道展
静岡県高等学校文化連盟会長賞
「臨 呉昌碩臨石鼓文」

呉昌碩の世界観を追求し、
重厚で力強い線を表現しました。

呉昌碩の重厚でのびやかな力強い線を表現することを意識しました。何度も試行と改善を繰り返す中で注力したのが、起筆の入り方とリズムです。呉昌碩の世界や作品としての世界観を追求しました。この作品から少しでも呉昌碩や篆書の魅力が伝わったらうれしく思います。この作品は、今までにないほど苦労し、多くの練習を重ねて制作した作品です。素晴らしい賞をいただいたことで自分の取り組みが認められた気がして、うれしく思います。
※呉昌碩 (ごしょうせき 中国清代の書家・篆刻家)

亀山璃衣
(新城市立八名中出身)

これまでの実績紹介

【近年の主な受賞歴・課外活動】
◆第46回全国高等学校総合文化祭東京大会 書道部門
読売新聞社賞・奨励賞、特別賞
◆第45回全国高等学校総合文化祭和歌山大会 書道部門 奨励賞
◆第44回全国高等学校総合文化祭書道部門 優秀作品展示作品代替審査会
読売新聞社賞・奨励賞、推薦
◆令和4年度静岡県高等学校総合文化祭書道部門
静岡県教育委員会教育長賞(最高賞)・静岡県高等学校文化連盟会長賞
◆令和3年度静岡県高等学校総合文化祭書道部門
静岡県教育委員会教育長賞(最高賞)・静岡県高等学校文化連盟会長賞
◆令和2年度静岡県高等学校総合文化祭書道部門
静岡県教育委員会教育長賞(最高賞)・静岡県高等学校文化連盟書道専門部会長賞
◆国際高校生選抜書展~書の甲子園~ 団体 全国準優勝2回、
中部北陸地区優勝7回・準優勝2回/個人 準大賞・優秀賞・秀作賞
◆センバツ(春の甲子園)出場校プラカード揮毫6回
(※そのうち1回は新型コロナウィルス感染症蔓延により大会中止)、出場校応援動画作成
◆高円宮杯日本武道館書写書道大展覧会 高円宮賞(最高賞)2回・日本武道館理事長賞・
全国都道府県教育長協議会賞・全日本書写書道教育 研究会賞・フジテレビ賞
◆全国書道展(大東文化大学) 文部科学大臣賞(最高賞)3回・大東文化大学学長賞・
書道研究所所長賞
◆中日書き初めコンクール 文部科学大臣賞(最高賞)2回・中日大賞・静岡県知事賞・
中日準大賞・浜松市長賞・中日賞他
◆高校生国際美術展 高校生国際美術展会長賞・東京都知事賞・秀作賞・奨励賞
◆全国高校書道展 学長賞(最高賞)理事長賞・副学長賞
◆全国書道展(岐阜女子大学) 大賞(最高賞)・準大賞・
静岡県教育委員会教育長賞・大学賞
◆学芸書道全国展 文部科学大臣賞(最高賞) 東京学芸大学学長賞・会長賞
◆全国学芸サイエンスコンクール 学校特別奨励賞(アート分野 書道部門)
旺文社赤尾好夫記念賞(金賞)・(入選)
◆高文連書道専門部西部支部書作展 高文連会長賞・特別奨励賞
◆高校生刻字展 第15回記念賞・準大賞
◆静岡県書道連盟書きぞめ展西部地区 県知事賞(学年最高賞)・特別奨励賞・県議会議長賞
◆東海学生書道コンクール 県知事賞(最高賞)・県教育長賞・大賞・準大賞

■在校生の声 vol.1

友人たちと
切磋琢磨しながら
成長していける環境です。
本多 真依
(森町立旭が丘中出身)
――浜松学芸高校の書道コースに入学した理由を教えてください。
好きな書道を専門的に学びたいと思い、学芸の書道コースに入学しました。また、「書の甲子園(国際高校生選抜書展)」に参加したいと思ったことも、入学理由の一つです。
――書道コースの学びについて、どのような特徴があると感じていますか?
他の学校ではできない学びができると感じています。特に篆刻・刻字を専門的に学べる学校は珍しいと思います。書を理論的に学ぶことができ、書道塾で得た視点とは違う見方を学べることが、書道コースの魅力です。まわりの友人も書道の経験が豊富な人ばかりなので、切磋琢磨しながら成長できます。
――先生方の指導について、特に印象に残っていることを教えてください。
実際に書いて見せて、細かいところまで添削してくださることが、先生方の指導の特徴です。作品としての構成の仕方までしっかり教えていただけます。ただ臨書するだけではなく、作品としての臨書のあり方を教えてもらいました。
※臨書 昔の人の書いた書の名品を学びながら書くこと
――イベント面(作品展など)での書道コースの魅力を教えてください。
文化祭の「うちわ即興書き」では、依頼された文字をその場で書きます。この時の反応によって自分の字の評価がはっきりと分かることが喜びです。また、「書道パフォーマンス」では、人前で書くことの難しさを感じるとともに、一般の方に受け入れられるパフォーマンスを学ぶことができます。
――書道コースの「楽しさ」について教えてください。
どんな場面で楽しさを感じますか?
書道パフォーマンスをする時や、その準備をしている時に楽しさを感じます。メンバーが協力しながら準備をするところが、やはり一番の魅力です。さまざまな意見が出る中で衝突したり意見が食い違ったりすることもありますが、そうしたプロセスも含めて経験したことすべてが達成感になります。真剣に取り組むからこそ、パフォーマンスが終わった後は楽しさを感じられると思います。
――自分自身でどんな成長を実感していますか?
また将来の目標を教えてください。
入学前と比べて実技作品への知識が増え、作品を見る力も身についたと思います。書道コースで身につけた力を活かし、書道を教える仕事に就くことが、将来の目標です。また、自主制作にも力を入れていきたいと思っています。

■先輩の声 vol.1

香寳さん 書道家
  • ■2014年度卒業
  • 京都橘大学日本語日本文学科
    書道コース卒業
  • (仕事の経歴)
    ・濵本祐介×香寳 盆栽×書道 合同展
    ・NEWoMan新宿アートパフォーマンス出演
    ・ONIMARU-NFT アートトイコラボ制作
    ・新宿都庁前キッズプロジェクト出演
    ・書道界で活躍する女流書家4人による『0展』を東京・名古屋で3度開催

自分にはない感性を持った友人に出会い、
楽しく書道を学ぶことができました。

――学業面で、高校時代に特に力を入れたのはどのようなことですか?
公募展などで賞を受賞することや作品展など常に目標を持ち、毎日数時間筆を執り書道と向き合ったことです。
――高校生活全体を振り返って、思い出に残っていることを教えてください。
私たちのクラスは切磋琢磨し合える関係でありながら、和気藹々としたみんなの個性が溢れていてとても楽しかった思い出があります。そして現在でも親交があり、お互いの展示会に行ったり仕事の近況を話し合ったり、とても良い関係性を築くことができています。
――卒業生の方の目から見た浜松学芸高校の魅力をご紹介ください。
芸術に力を入れている浜松学芸高校だからこそ、とても良い環境で書道を学ぶことができたと思います。そして書道コースの先生方が常に真摯に向き合ってくださるので、より楽しく書道を学ぶことができました。 また美術コース、音楽コースなど色々なコースがあり、自分にはない感性を持った友人に出会えました。そうした経験ができることも浜松学芸高校の魅力だと思います。
――現在のお仕事の内容を教えてください。
また、どのようなやりがい、手応えを感じていますか?
書道家として、作品展の開催や、飲食店・美容サロンなどへ作品の提供、看板・ロゴ制作などのクライアントワーク、パフォーマンスなどを行っています。 やりがいを感じるのは、香寳の作品がお客さんの手元に渡り、感動してもらえた瞬間です。香寳の作品を通して人に何かを感じてもらえた時が一番嬉しいです。また、書道を通して人に勇気や感動を与えられるということはとても素敵なことだと実感しています。
――高校時代に学んだことが、現在の仕事にどのような形で役立っていますか?
書道の技術と共に古典や時代背景を勉強できたことは現在の作品制作の軸となる大事な部分であり、書道家活動をするうえでの自信にも繋がっていると思います。

■先輩の声 vol.2

須藤 久留美さん 岐阜県立高校書道科教諭
  • ■2017年度卒業
  • 東京学芸大学教育学部中等教育教員養成課程
    書道専攻卒業

作品展をみんなで作り上げたことが、
高校生活の一番の思い出です。

――学業面で、高校時代に特に力を入れたのはどのようなことですか?
常に、書のエキスパートである先生方から、できるだけ多くのことを吸収しようという思いで学んでいました。また、書道の指導者になることをめざしていたので、書に関する知識や技術を広く、深く身につけることを意識して、書道に取り組みました。
――高校生活全体を振り返って思い出に残っていることを教えてください。
高校での学びの集大成として行った作品展が印象に残っています。 作品制作を通して、自分の書や自分の表現と真摯に向き合うことができました。そして、仲間と共に協力し励まし合いながら取り組むことで、「作品展をみんなで作り上げたんだ」という達成感を得られたことが、高校生活で一番の思い出です。
――卒業生の方の目から見た浜松学芸高校の魅力をご紹介ください。
浜松学芸高校の書道コースの魅力は、書道のエキスパートであり頼りになる先生方がいらっしゃることと、書道に打ち込める環境があることだと思います。
――現在のお仕事の内容を教えてください。
また、どのようなやりがい、手応えを感じていますか?
書道教諭として、岐阜県の公立高校に勤務しています。生徒が書を通して自己表現する場面に直接関われることにやりがいを感じています。また、生徒自身が成長を実感している姿や書を楽しんでいる姿を目にした時も、やりがいを感じます。
――高校時代に学んだことが、現在の仕事にどのような形で役立っていますか?
高校時代に出会った先生方は私の目標であり、先生方から指導していただいたことは、今の私が授業や部活動の指導をする上での根幹をなすものになっています。 高校時代、「よりよい作品」をめざして練習に励んできた経験が、今は「よりよい授業」「よりよい指導」をめざして日々学び、そして実践することにつながっていると感じています。