芸術科 美術 コース
美術コースの学び
コネクテッド・インク×TKG

【在校生の声】普段の授業とは違った、
実践的な経験ができることが
魅力です。

- ――校外で行われる活動の中で、特に印象に残っていることを教えてください。
-
ワコムという企業が主催する「コネクテッド・インク」に参加したことが印象に残っています。「コネクテッド・インク」は、アート、人間表現、学び、それらを支えるテクノロジーの新しい方向性を模索するイベントです。私たちは、美術を学ぶことの楽しさや大変さ、それを乗り越えた先にある自己実現への希望などを伝える動画を作成しました。
また、「浜松いわた信用金庫創立75周年事業」の一環として、浜松いわた信用金庫のイメージキャラクターを使った日本画を描き、75周年を祝いました。
- ―――準備段階ではどんな努力や工夫をしましたか?
- 「コネクテッド・インク」の動画作成の際は、「どんな場面を切り取って撮影するか」「どんなナレーションにするか」を先生と話し合い、動画の完成度を高めるために、何度も撮り直しました。浜松いわた信用金庫の取り組みでは、イメージキャラクターを日本画らしく表現するための技法を考え、表現方法について友だちと話し合いながら、自分が納得できる作品になるまで描き続けました。

- ――それらの取り組みを通してどんなやりがいを感じましたか?
-
私はそれまで動画の撮影を経験したことがなかったので、動画制作を通して新しいことに挑戦する新鮮さを感じ、二次元の創作では表現できない音や動き、光などを扱う面白さを感じました。また、動画を作るための基本的なノウハウを学ぶことができました。
また、浜松いわた信用金庫の取り組みは、日本画について深く学ぶ良い機会になりました。見る人の視点を意識しながら絵を描く中で、新しい創作の視点を得ることができたと思います。
- ――校外のイベントや地域の人との関わりを経験することに、どのような魅力を感じますか?
- 普段の授業では経験できないような実践的な経験ができることが一番の魅力です。美術を学ぶ身としては、「見てもらう」という意識を持って制作することが大切で、その訓練になります。美術は単なる個人的な表現にとどまらず、社会的な意味を持つものだと思います。それを実感できることが、こうした取り組みの魅力です。また、浜松いわた信用金庫の取り組みでは、新しいアイデアを生み出したりアートの表現方法を見つけたりすることができました。自分の表現の幅を広げ、問題解決能力を高めることにつながったと思います。
- ――普段は、日本画専攻でどのような学びに力を入れていますか?
- 日本画専攻では、植物などの自然物や箱・ペットボトルなどの人工物をじっくり観察し、写実的に描く訓練を行っています。それを通して対象を細部まで観察する力を養い、形や色のとらえ方を学んでいます。また、日本画ならではの岩絵具や和紙などの伝統的な画材の使い方を学び、さまざまな表現の研究をしながら独自の絵画表現を追求しています。
- ――今後実現したい目標を教えてください。
- 美術コースには、自分とは違う考えや感性の人が多く集まっています。そんな環境で高校時代を過ごすことによって、新しいことを発見し自分を見つけることができます。また、専門的な知識を持つ先生方からは、将来に向けて必要な情報を得ることができます。
- ――美術コースでの学びの成果を活かして実現したい目標を教えてください。
- どのような表現や技法が自分に合っているかを見極め、独自のアートスタイルを確立したいと思います。また、より発展的な技術を身につけて自分の作品の幅を広げ、たくさんの人に見てもらえるような作品を作りたいと思います。
2024年度 受賞作品
【受賞者の声】
温かみを感じられる作品にするため、
点描の技法を効果的に使いました。
点描の技法を効果的に使いました。
「うたうおばけ」という本を読んで、些細な日常の中にも面白さや美しさがあることに気づきました。その気づきをもとに、自分の部屋を舞台に新しい景色を描いて教訓を表現したのが、この作品です。温かみを感じられる作品にしたかったので、点描の技法を効果的に使うことに力を入れました。賞を受賞できたことはもちろん、自分の作品が多くの人に届いて新たなつながりが生まれたことにもうれしさを感じました。
美術コースには、自分の個性をさらに深め、より良いものに成長させてくれる環境があります。これからもさまざまな作品に触れ、多様な経験を積んで視野を広げ、自分が良いと思える作品を作り続けていきたいと思います。

これまでの実績紹介
【2024年度 主な受賞歴・課外活動】
令和6年度 第25回高校生国際美術展
- ・秀作賞
- ・奨励賞
令和6年度 高等学校総合文化祭(美術・工芸部門)第55回西部展
- ・特選
- ・奨励賞
令和6年度 静岡県高等学校総合文化祭(美術・工芸部門)
第72回静岡県高等学校美術・工芸展
- ・静岡県高等学校美術・工芸教育研究会 優良賞
※静岡県代表として、本校より2名の作品が「かがわ総文2025」へ出品されます。 - ・特選
令和6年度 第46回日本画展 一般の部
- ・県文化協会賞(最高賞)
令和6年度 第36回静岡県読書感想画コンクール
- ・最優秀作品/静岡県教育委員会教育長賞(中央コンクール応募作品)指定の部
- ・最優秀作品/静岡県教育委員会教育長賞(中央コンクール応募作品)自由の部
- ・優秀作品/一般社団法人静岡県出版文化会理事長賞(中央コンクール応募作品)
指定の部 - ・優良作品/毎日新聞社静岡支局長賞 指定の部
- ・奨励作品/静岡県高等学校図書館研究会長賞 自由の部
令和6年度 第36回読書感想画中央コンクール
- ・最優秀作品/文部科学大臣賞 自由の部 ※2年連続受賞
- ・奨励賞 指定の部
浜松市 第72回市展
- ・浜松市長大賞
【在校生の声】vol.1
自分の作品が少しずつ
変わっていくことに
楽しさを感じます。

- ――学芸の美術コースに入学した理由を教えてください。
- 私は中学生の頃からデザインを学びたいと考えていました。学校見学に来た際に、先輩方のデザイン作品を見て「自分もこのような作品を作れるようになりたい」と思い、浜松学芸高校の美術コースに進学することを決めました。
- ――美術コースの学びにはどのような特長がありますか?
- 自分の進路についてじっくりと考えられるよう、カリキュラムが組まれていることが特長です。1年次は各専攻に分かれる前段階として、まんべんなく美術の基礎を学びます。その中で各専攻の作品づくりを体験できるので、着実に段階を踏みながら2年次のコースを選ぶことができます。
- ――先生方の指導について、印象に残っていることを教えてください。
- 何名もの先生方に広く意見を聞けることが、良い点だと思います。各専攻に専門の先生がいらっしゃるので、デザイン専門の先生に意見を聞くことができます。別の先生の意見が聞きたくなったら、他専攻の先生にアドバイスを求めることも可能です。
- ――美術コースのイベントについて印象に残っていることを教えてください。
- 特に記憶に残っているのは、毎年秋に開催される静岡県高等学校総合文化祭の美術工芸部門に出品したことです。作品づくりを進める中で、自分の作品が毎日少しずつ変わっていくことに楽しさを感じました。他の生徒と並んで制作しますが、その内容は個々に違います。そういう体験ができるのも美術の専門コースならではだと思います。
- ――美術コースで「楽しさ」を感じるのはどのような時ですか?
- 私が楽しさを感じるのは、友人たちの作品を見ながら皆で感想を言い合う時です。展覧会などではお互いが頑張った点や特に見てほしいポイント、作品の良さについて話し合ったり、友だちの作品について考察したりします。専門コースにいる者ならではの視点を持つことができたと感じ、充実した気持ちになります。
- ――美術コースでどんな力が身につきましたか?
その力を活かしてどんな目標を実現したいですか? - デッサン力や観察力はもちろんのこと、「空間を把握する力」が高まったと思います。それにより、見えない箇所がどのような形をしているかをある程度予測しながら、デッサンができるようになりました。美術コースで身につけたこのような力を土台として、自分が思い描く世界を絵やデザインで明快に表現できるようになりたいと思います。
【先輩の声】vol.1
冨田 楓さん
(株)フジテレビジョン
- ■2014年度卒業
- 筑波大学芸術専門学群
日本画コース卒業 - 筑波大学大学院人間総合科学研究科
芸術専攻
日本画コース修了

コンセプトの大切さを学んだ経験が、
デザインの仕事に役立っています。
- ――学業面で、高校時代に特に力を入れたのはどのようなことですか?
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高校に入学した頃はデッサンも作品もどう描いていいのか分かりませんでしたが、クラスメイトの作品を見て「自分よりも絵が上手い人がこんなにたくさんいるんだ」と衝撃を受けました。
がむしゃらに描いてもこの人達には勝てないと思い、美大や藝大の合格作品や画集をたくさん見て、どのようにモチーフや物事を捉えているのかをインプットするようにしました。国宝や重要文化財から日本美術院展覧会(院展)などの公募展まで、実際に多くの作品を見ることで自分の表現の引き出しが増えたと感じています。高校2年の時には、画家の千住博さんの作品と言葉に心を打たれ、いかにして彼の思想や表現を自分に落とし込めるかを考えるようになりました。
また、大学受験では美術以外の教科も必要不可欠で、授業で学んだ内容を手帳にまとめてずっと持ち歩いていました。自転車での通学時間も無駄にしたくなかったので、赤信号で止まったときに手帳を見て、次の赤信号までに暗記していました。赤信号以外手帳が見られないのがもったいなくて片道7キロを90分かけて歩いて手帳を見ていた時期もあります。でも、この勉強法は何度か試してやめました(笑)。
- ――高校生活全体を振り返って思い出に残っていることを教えてください。
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夏休み、冬休み、春休みも同級生とアトリエに集まって制作を進めていました。お昼にそれぞれコンビニで買ってきた食材を組み合わせて食べていた時間が本当に楽しかったです。(サバ缶とパイナップルが意外と合いました。)
また、大学受験のために作成したポートフォリオを提出した翌日、疲労で高熱を出してしまったことも記憶に残っています。次の日の体育祭にどうしても出たくて、先生の反対を押し切りクラス対抗リレーの決勝だけ出場しました。ゴールテープを切ってみんなで優勝を分かち合ったのは良い思い出です。代償として体調の回復が長引いて2〜3日学校を休んでしまいましたが・・・・・・。
- ――卒業生の方の目から見た浜松学芸高校の魅力をご紹介ください。
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実際に美大・藝大受験や作品制作を経験してきた先生方から専門的に指導を受けられるという環境はとても恵まれていると思います。公募展に出品する機会があったのも自分にとっては非常に良い経験でした。大学に受かるためのデッサンスキルを身につけるだけでなく、アーティストとして表現するための基礎を養うことができました。
そうして過ごした高校時代の3年間、クラスメイトと衝突したことは一度もなかったと思います。クラスメイト全員が美術・書道の表現を探究しているからなのか、自分以外の人が好きなものを否定することはありませんでした。お互いに干渉しないような関係性で、心地よい雰囲気でした。
- ――現在のお仕事の内容を教えてください。どのようなやりがい、手応えを感じていますか?
- テレビ番組などスタジオセットのデザインをしています。ドラマやコントなど日常的な空間からバラエティ、情報・報道番組などの抽象的な空間まで、さまざまな世界観を作り出す仕事です。高校から大学院まで日本画を専攻していた身としては、立体的にしていく感覚が未知で新しく知ることばかりです。表現者として、平面という枠組みを越えた新しい表現方法を得ていると感じています。見た目のクオリティはもちろんですが、材質やコスト面、扱いやすさなど考えるべきことが多く、まだまだ勉強中です。
- ――高校時代に学んだことが、現在の仕事にどのような形で役立っていますか?
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コンセプトを明確に決めることは、現在の仕事においても改めて大事だと感じています。
私は、高校時代の作品制作でコンセプトを大切にしてきました。コンセプトを決めると「モチーフにこれを取り入れよう」「そうしたらこういう色合いにしよう」「この技法が効果的かも」と自然に制作内容が具体性を帯びていきます。
私の仕事も同じで、デザインを考える時にまず理想のイメージを明確に決めて、その理想に近づくために形を決めたり壁紙や色合いを選んだりするとスムーズです。コンセプトという言葉は、「目標」と捉えることもできると思います。理想的な目標をいかにして達成するかを考える習慣が、大学受験や作品制作を通して身についたのだと思います。
【先輩の声】vol.2
空閑 美帆さん
ツインギャラリー蔵
- ■2010年度卒業
- 多摩美術大学大学院 絵画専攻
版画研究領域修了

高校時代の友人との会話が、
美大に進むきっかけになりました。
- ――高校時代の美術の勉強で、特に力を入れたのはどのようなことですか?
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特に力を入れたのは、デッサンです。私は当初、デッサンが苦手だったので、毎日早朝7時前に登校し、デッサンを練習しました。思うように上達しませんでしたが(笑)、誰もいない美術室の匂いが好きで、そこであれこれ考える時間が心地よく、自分のベストポジションだと感じていました。
苦手なことを克服することも大切ですが、自分にとって心地よい場所を探すこともとても大切だと思います。心地よさを感じられる場所を見つけることが、自分の得意なことを見つけるきっかけになると思います。
- ――高校生活全体を振り返って、思い出に残っていることを教えてください。
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高校2年の時、静岡県立美術館で教育普及の一環として募集していた屏風絵のギャラリートーカーに、クラスメイト数人と参加しました。美術館の心臓部にあたる収蔵庫に入った時の静かな興奮と、学芸員さんの解説を手本にして作品を解説した時の緊張と楽しさは、今も印象に残っています。
また、帰りの電車で友人たちと何気なく進路について話していた時、一人が「美大に行く」と宣言する姿に感化されたことも記憶に残っています。私は当時、専門学校で服飾の勉強をするか美大に行こうか悩んでいましたが、美大に行こうと思えるきっかけになりました。その時の光景は、夕日が沈む車窓風景とともに、今も脳裏に鮮明に焼き付いています。
- ――卒業生の方の目から見た浜松学芸高校の魅力をご紹介ください。
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好きなことに取り組む生徒を全力で応援してくれる学校です。高校卒業後の進路を考える時、「自分は何がしたいんだろう」「自分の好きなことって何だろう」と思い悩むこともあると思いますが、浜松学芸高校は校外での活動にも積極的に取り組んでおり、進路実現に至る選択肢を広げてくれる学校だと思います。
また、美術・書道を学ぶ生徒はみんな、高校進学時に「自分の好きなこと」を考えた上で高校に入学しています。自分や他人の「好き」を毀損することなく、個性的なメンバーがお互いを尊重し合える環境だと思います。
- ――現在のお仕事の内容を教えてください。どのようなやりがいや手応えを感じていますか?
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レンタルスペース兼企画ギャラリーで、広報物のデザインや展覧会の企画をしています。レンタルの際は、主催の方の相談に乗ったり、場合によってはアドバイスをしたりすることもあります。企画展の際は、企画書の作成、作家の選定、必要に応じて助成金や後援申請などを行います。また、作家の思いが伝わるよう動線を意識した展示構成を考え、説明文や展示什器の製作を行い、多くの人が足を運んでくれるよう関連イベントを企画し、プレスリリースをして……と、展示に関わるさまざまな仕事をしています。
来場者の方と交わす会話や、関わってくれた作家さんやイベント関係者からのリアクションが好意的な時は「やってよかった」という満足感があります。それと同時に、次の企画展のハードルが上がった気がして、「もっと頑張らないといけないな」と自分を鼓舞しています。
- ――高校時代の経験が、現在の仕事にどのような形で役立っていますか?
- 高校の文化祭で私はファッションショーの責任者を務め、書道のパフォーマンスを取り入れました。ショー自体は成功したかもしれませんが、個人的にはうまくいかないことが多く、「自分は企画者に向いていない」と感じ、挫折感を味わいました。しかし、その時の挫折があったからこそ、今の仕事では失敗があっても何かを学び、さまざまな場面に活かすことができていると感じます。
高校教育
Highschool